日本で売るための3つの関門 · 3 / 3 いつ決まるか
製品も価格も担当者も問題ないのに、実行が丸1年先になる。原因は暦です。日本の予算がいつ作られるかを知らないまま提案すると、これが起きます。
海外企業から「日本の担当者はとても前向きなのに、実行時期を聞くと来年だと言われた」という相談を受けることがあります。値切られているわけでも、後回しにされているわけでもありません。
日本の官公庁・自治体、そして多くの日本企業の会計年度は4月に始まり、翌年3月に終わります。この1点が、海外からの商談の進み方を大きく変えます。
重要なのは、年度が4月始まりという事実そのものより、その予算がいつ組まれるかです。
各部署が「来年度これをやりたい」を洗い出し、金額をつけて要求します。ここに載っていない案件は、翌年度に実行できません。提案が届くべきなのは、この時期です。
要求が絞り込まれ、承認されます。この段階で新しい案件を差し込むのは、通常きわめて困難です。
ようやく発注が動きます。ここで初めて「買える」状態になります。
4月に商談を始めた案件が実行されるのは、多くの場合、翌年の4月です。
年度の途中で予定外の大きな支出を追加することは、基本的にできません。補正予算という例外はありますが、それを前提に商談を設計するのは現実的ではありません。
海外企業がこの構造を知らないまま進めると、二つの誤解が起きます。
後者だと分かっていれば、やることは変わります。急かすのではなく、担当者が翌年度の要求に載せるための材料を、いま渡すのが正解になります。
この暦の話は、隠すより先に伝えたほうが良い場面が多くあります。実際に、ある海外メーカーとのやり取りで、次のように率直に伝えたことがあります。
日本の公的予算は4月から3月です。年度の途中で計画外の支出を追加することは通常できません。正規のルートで進めた場合、実行は翌年度になります。御社の受注が今すぐ必要という意味であれば、日本は今シーズンの答えにはならないと思います。
相手にとっては良い知らせではありません。それでも、時間を無駄にしなくて済むという意味では、最も価値のある情報です。この率直さが、かえって信頼につながることもあります。
日本の商談が遅く見えるのは、意思決定が遅いからではなく、年に一度しか買える瞬間がないからです。
この暦を知っていれば、待つ時間は準備の時間に変わります。逆に知らないまま進めると、良い提案をしたのに1年を失うことになります。
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