日本で売るための3つの関門 · 2 / 3 どの財布から出るか
自治体調達では、持ち込む部署を間違えると、どれだけ製品が良くても予算がつきません。宣言と予算は、別のものです。
自治体に製品を提案している海外企業から、こういう話をよく聞きます。「話は理解してもらえた。共感もされた。でも予算がないと言われた」
このとき起きていることは、多くの場合「予算がない」ではありません。その部署に予算がないだけです。同じ自治体の別の部署には、同じ製品を買える予算枠が存在していることがあります。
典型的な例が、ゼロカーボンシティ宣言です。2050年までに二酸化炭素排出量を実質ゼロにすると表明した自治体は数多くありますが、宣言そのものに財源は紐づいていません。
実際に、日本で自治体向けにエネルギー関連の提案を続けている企業の担当者は、こう話しています。
ゼロカーボンシティ宣言を表明する自治体は増えているが、具体的な実装フェーズへの移行に課題を抱えるケースも多い。 産業ガス専門誌の取材記事より(2026年4月)
宣言を切り口に環境部門へ持ち込むと、方針としては歓迎されます。ただ、方針に予算がついていないので、そこで止まります。丁寧な会議は取れるが、発注は出ないという状態です。
同じ製品でも、置き場所を変えると財布が変わります。エネルギー関連の設備を例にすると、次のように分岐します。
| 持ち込む先 | 買う理由 | 予算の状態 |
|---|---|---|
| 環境・脱炭素部門 | CO₂排出量の削減 | 宣言はあるが財源が別途必要。年度内の即応は難しい |
| 防災部門 | 停電時に指定避難所・診療所・庁舎を動かす | 常設の予算枠を持っていることが多い |
| 地方創生の担当課 | 地域課題の解決・実証 | 国の交付金を引く前提。公募のタイミングに依存 |
論点は炭素ではなく、何日もつか。買い手が変われば、語るべき言葉も変わります。
防災の文脈では、評価される数字がまったく変わります。削減量ではなく継続時間です。避難所の非常用発電機が、実際の負荷ではどれだけもつのか。数時間なのか、数日なのか。ここが議論の中心になります。
地方創生系の交付金は、自治体が国に申請して獲得します。つまり自治体側にも締切があるということです。
この窓が開いている時期に提案が届けば、担当者は自分の申請材料として使えます。窓が閉じた直後だと、どれだけ良い提案でも「次の機会に」となります。製品の優劣ではなく、暦の問題です。
逆に言えば、窓が開く時期を知っていること自体が、提案の価値になります。「この交付金の公募がこの時期にあるので、それに合わせて設計しませんか」と言える相手は、担当者にとって心強い存在です。
実務的には、提案の前に次の3点を確認するだけで、結果が変わります。
この3点は公開情報と対話で確認できます。ただし、どの部署の誰に聞けばよいかを知っている必要があります。
自治体調達で「予算がない」と言われたとき、それは市場が無いという意味ではありません。財布のある部署にまだ届いていないという意味であることが多くあります。
同じ製品が、別の部署の、別の予算で、別の理由で買われる。海外の製品が日本で止まる原因として、これは非常に多いパターンです。
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