日本市場参入
9月に動かないと、
来年4月まで待つことになる
日本には、外から見えない二つの時計があります。
どちらを外しても、提案は一年先送りになります。
日本市場参入
日本には、外から見えない二つの時計があります。
どちらを外しても、提案は一年先送りになります。
海外の企業から、こう言われることがあります。「日本の担当者は前向きだった。なのに、半年経っても何も起きない」
理由の多くは、熱意でも価格でもありません。提案を出した時期です。
日本の上場企業のおよそ7割が3月決算です。4月に始まり、3月に終わる。9月末が上期の終わりで、10月から下期に入ります。
これが何を意味するか。予算は年度の初めに決まっています。年度の途中で新しい支出を作るには、既存の費目から動かすか、特別な承認を取るしかありません。どちらも重い。
「いいですね」と言われたのに進まないのは、
その年度に、使う金の置き場所が無いからです。
そしてここが、外から最も見えにくい部分です。
多くの企業で、来年度(翌4月から)の予算要求は、秋のうちに作られます。部門が要求を出し、調整され、年末から年明けにかけて固まる。会社によって時期は違いますが、年が明けてから新しい費目を差し込むのは、ほぼ不可能です。
来年度の要求に、費目として載る可能性がある
今年度は金が無く、来年度は締め切り後。実質、再来年度
つまり、同じ提案が、出す月によって半年から一年半の差になります。内容は一文字も変わらないのに。
失礼な質問ではありません。むしろ担当者は安心します。「今年度中に動かせるか、来年度の要求に載せるか」を一緒に決める姿勢は、相手を売り込み先ではなく共同作業者として扱っていることになります。
日本の担当者は、社内で予算を取る仕事をしています。そこを手伝う提案者は、他のベンダーと違って見えます。
「ご相談ください」では要求書が書けません。概算でいいので、年間いくらか、初期にいくらかを数字で出す。担当者はそれをそのまま社内の紙に転記します。
見積書である必要はありません。レンジで構いません。転記できるかどうかが分かれ目です。
本体の導入は来年度でも、今年度の残り予算で収まる小さな検証なら通ることがあります。部門長の裁量枠に入る規模であれば、稟議の階段が一段減ります。
そして検証の実績は、来年度の要求書の「類例」欄を埋める材料になります。二つの時計を、両方使うことになります。
自治体や公的機関と組む場合、この時計はもっと動かせません。予算費目が年度開始前に立っていなければ、その事業は存在しません。担当者がどれだけ前向きでも、費目が無ければ執行できない。
公的な実証事業を狙うなら、提案は前年の秋です。春に持ち込んでも、話を聞いてもらえるだけで、その年度には何も起きません。
もし今が1月や2月なら、無理に押し込まないことです。「来年度の要求に載せていただくために、今から準備します」と言い切った方が、相手にとっては扱いやすい。
そして最も避けるべきは、返事が来ないことを拒絶と受け取って撤退することです。日本では、時期が合わないことと、興味が無いことが、同じ沈黙として現れます。
断られたのではなく、
まだ金の置き場所が無いだけかもしれません。
東京で株式会社コホマダを経営し、日本の県の海外ビジネス支援駐在員という公職を務めています。民間企業の商談と、公的機関の予算編成の両方に関わっているため、二つの時計が実際にどう動いているかを見ています。