「黒字化まで3〜4年」は印象論ではありません。どこに時間がかかり、どこは短縮できるのかを、実際の商談での指摘をもとに整理します。
「日本市場に入ると決めても、黒字化まで3〜4年は見ておいたほうがいい」——これは筆者が海外企業と話すたびに、繰り返し出てくる感覚値です。
在日アイルランド商工会議所の担当者と話した際も、まったく同じ言葉が出てきました。
「日本市場に入るのが難しいという印象がある。信頼関係の構築に時間がかかり、赤字から抜け出すのは3年後、4年後というような、長い目で見ないと成功できないというイメージが、ビジネスの観点からするとある」 在日アイルランド商工会議所(IJCC)・オペレーションズマネージャー
問題は、この3〜4年のうちどこが本当に必要な時間で、どこが短縮できる時間なのかが、外部からはほとんど見えないことです。
担当者→課長→部長→役員という決裁のレイヤーを、海外企業が「提案が良ければすぐ決まる」という前提で臨むと、そのレイヤーの数だけ想定外の時間がかかります。これはリスクを分散させる仕組みとして機能しています。
日本の商談では「他でどう使われているか」が、製品のスペックや価格と同じかそれ以上の重みを持ちます。実績のない提案を通した担当者は、うまくいかなかったときに自分の判断として問われるためです。日本での最初の1社目が、他のどの国よりも重くなります。
多くの国では関係構築と契約はほぼ同時に進みますが、日本では関係構築が先に進み、契約はその上に後から乗る形になりがちです。「この人(この会社)となら大丈夫」という感覚が、契約書の文言より先に来ます。
3〜4年という数字は、何もしない場合の目安に過ぎません。
実際には、この3つの構造のどこに人を割くかで、期間は大きく変わります。
日本市場参入に時間がかかるのは、市場が閉鎖的だからではありません。リスクを分散させ、実績を重視し、契約より先に関係を作るという、一貫した意思決定の設計があるためです。
この設計そのものを変えることはできません。しかし、どこにレバレッジをかけるか——意思決定者への到達経路、最初の実績の作り方、文脈の翻訳——を戦略的に選ぶことで、3〜4年を待つのではなく、短縮できる部分から先に手をつけることは可能です。
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