海外展開が止まる場所
海外の取引先で、
実際に決めているのは誰か
良い商品なのに売れないとき、原因は品質でも価格でもない。
「誰が買うか」を読み違えていることが、いちばん多い。
海外展開が止まる場所
良い商品なのに売れないとき、原因は品質でも価格でもない。
「誰が買うか」を読み違えていることが、いちばん多い。
海外展開の相談で、最初に聞くようにしている質問があります。
「その国で、その商品を最終的に買うと決めるのは、どの立場の人ですか。」
驚くほど多くの場合、答えは日本での買い手の姿になっています。日本で消費者が買っているから、海外でも消費者が買うと考える。これが、良い商品が売れない最大の理由だと思っています。
日本では家族が買います。米国では、保険会社や在宅ケア事業者を通じて導入される割合が高い。個人向けの広告を打っても、決裁の場所に届きません。
必要なのは消費者向けのマーケティングではなく、事業者の採用リストに入ることです。求められる資料も、価格表ではなく導入実績と保守体制になります。
代理店を探すのが先だと考えがちですが、実際にはその装置を使った論文が出ているかどうかで採用が決まる面が強い。
つまり販路の問題ではなく、現地の研究者に触ってもらう機会の問題です。学会への持ち込みや、共同研究のほうが、代理店契約より先に来ます。
買い手は小売ではなく、その手前のディストリビューターであることが多い。そして彼らが最初に見るのは味ではなく、表示が現地の規制に適合しているかです。
植物性たんぱく製品が「ミート」に類する表記を使えない、といった規制は代表例で、中身は変えていないのに商品名から作り直すことになります。
買い手は工場ではなく代理店で、しかも多くの場合排他契約が付きます。最初に組んだ一社が、その国の市場全体を決めてしまう。
急いで決めた相手が、その後何年も動けない足かせになることがあります。商品より先に、誰と組むかで結果が変わる領域です。
買い手は自治体や公的機関で、決め手は性能ではなく「住民や議会に説明できるか」になります。技術的に優れているという説明は、この場では二番目の論点です。
この構造は日本でも同じです。だから日本で公共案件を経験している企業は、海外でも公共に強いことがあります。
展示会や商談会では、話しかけてくれる相手が最初の接点になります。そして話しかけてくる人は、たいていその国で最も買い手に近い人ではありません。輸入代行、コンサルタント、小規模なバイヤー。悪意ではなく、単にその人たちがいちばん動きやすいからです。
そこから商流を遡らないまま話を進めると、決裁権のない相手と半年やり取りすることになります。
使う人と払う人が同じとは限りません。介護機器は使う人と払う人が違う典型です。
価格か、認証か、論文か、前例か。国と業種で変わります。
③ 断るとしたら、誰が断るか。——この三つ目がいちばん役に立ちます。断れる人が、実際に決めている人だからです。
採択された時点で、計画は承認されています。設備の導入も進みます。しかし申請書の書式には、「その国で誰が買うか」を書く欄がありません。
だから設備が入り、展示会にも出て、その後で商流の違いに突き当たる。これは企業の力量の問題ではなく、確認する順序の問題です。