海外展開が止まる場所
補助金に採択された後、
海外展開はどこで止まるのか
設備は入った。相手も見つかった。それでも動かない。
採択後に止まる場所は、業種ごとにほぼ決まっています。
海外展開が止まる場所
設備は入った。相手も見つかった。それでも動かない。
採択後に止まる場所は、業種ごとにほぼ決まっています。
ものづくり補助金の「グローバル展開型」は、採択された時点で三つのものが揃っています。予算、意思、そして実績報告の義務です。事業計画名まで公開されるので、その会社が何をやろうとしているかは外から読めます。
ところが、採択の一年後に何が起きているかは、ほとんど公開されません。設備は導入された。展示会にも出た。それでも最初の一件が動いていない、という状態を、私はいくつも見てきました。
止まっているのは、営業でも品質でもありません。
ほとんどの場合、「そもそも入れられるかどうか」の確認が後回しになっていることです。
相談を受けていて気づいたのは、止まる場所が業種ごとにほぼ固定されている、ということです。以下は実際によく出てくるものです。
園芸資材や農業関連の輸出は、製品の良し悪しより先に植物検疫が来ます。米国であれば USDA APHIS の管轄で、土壌そのものの持ち込みは原則として認められません。熱処理や滅菌の方法と、その証明の取り方で、進み方がまったく変わります。
設備投資より先に確認すべきだった、という順序の問題です。
相手国ごとに表示規制が違います。植物性たんぱく製品が欧州で「ミート」に類する表記を使えない、といった話は代表例で、中身は何も変えていないのに商品名から作り直すことになります。
また蒟蒻ゼリーのように、安全性の扱いが国ごとに分かれるため、一つの製品仕様で複数市場を狙えない品目もあります。
人間向けの食品より要件が重く、製造施設そのものの認定が相手国ごとに要ります。増産設備を入れても、認定が下りるまでは一箱も出せません。設備と認定の順序を逆にすると、稼働しない設備の減価償却だけが進みます。
鮮度でも価格でもなく、相手国側のHACCP登録施設の要件で止まることが多い分野です。自社工場が要件を満たしていても、加工を委託している先の登録状況までさかのぼって問われます。
通信を伴う製品は認証が必要ですが、それは想定内のはずです。想定外になりやすいのは買い手の構造の方です。たとえば米国の見守り機器は、個人が買うより保険会社や在宅ケア事業者を通じて導入される比率が高い。売り先が消費者ではなく事業者の採用リストなので、消費者向けの売り方をしても届きません。
商品の問題ではなく、代理店契約の排他条項が効きます。最初に組んだ一社に排他権が付くことが多く、一社目の選択がその後の市場全体を決めてしまいます。急いで決めた相手が、数年間そこから動けない足かせになります。
六つとも分野は違いますが、構造は同じです。
商品を作る力の問題ではなく、
「どこで止まるか」を先に知らなかった、という順序の問題。
補助金の申請書は、設備と計画を書く書式になっています。「入れられるか」を先に確認する欄はありません。だから採択され、設備が入り、その後で検疫や表示や施設認定に突き当たる。この順序は、制度上ある程度避けにくいものだと思っています。
順番はひとつです。
その国に、その品目を、その形状で持ち込めるか。持ち込めるとして、誰の許可が要るか。書類は誰が作るか。
価格、パッケージ、展示会、現地パートナー。これらは持ち込めることが分かってから決めても、遅くありません。
逆にしてしまうと、パートナーを見つけた後で「入れられない」と分かり、相手にそれを説明することになります。信用の面でも損です。
私は鳥取県の海外よろずビジネスサポート駐在員として、日本企業の海外展開に関わっています。海外の企業が日本市場に入るときの支援も並行してやっているので、両側で同じ壁を見ているのが自分の立ち位置です。
「うちの場合はどこで止まりそうか」を確認したい、という段階のご相談が、いちばん役に立てると思っています。判断材料が足りない状態で設備を入れてしまう前に、一度整理する価値はあります。