日本 → 海外
無農薬でも認証がない、を
海外の買い手はどう見るか
認証がないから輸出できない、ではありません。
当たる相手を先に選んでいないだけです。
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認証がないから輸出できない、ではありません。
当たる相手を先に選んでいないだけです。
茶農家の方と輸出の話をしていると、途中で必ず声が小さくなる瞬間があります。「うちは農薬を使っていません。ただ、認証は取っていないんです」。そのあとに、たいてい「だから輸出は難しいですよね」と続きます。
この二つの文は、つながっているように見えて、実はつながっていません。認証を持っていないことは、輸出できない理由にはなりません。ただし、どの買い手に当たるかを間違えると、動かない相手に何ヶ月も時間を使うことになります。
「無農薬で作っている」と「有機認証を持っている」は、国内では長いあいだ別の話として扱われてきました。前者は栽培の実態、後者は制度上の資格です。実態が伴っていても資格を取らない生産者は珍しくありません。理由は、だいたい三つに収まります。
認証の作業は、畑仕事とは種類の違う労働です。圃場ごとの記録、資材の由来の証明、区分管理の手順書、そして検査対応。作業の中身ではなく、作業を文書で証明する仕組みを作ることが求められます。家族数人で回している経営体では、この部分を担う人がいません。誰かの夜の時間が毎月削られることになり、それが続かないと分かっているから、手を出さない選択になります。
認証は一度取れば終わりではなく、維持のために継続して費用が発生します。小さな経営体にとって問題なのは金額の絶対値よりも、それが「売れるかどうかに関係なく毎年出ていく支出」になることです。売上の見通しが立つ前にこの固定費を背負う判断は、経営としては保守的にならざるを得ません。
そして最も大きいのがここです。国内の流通では、認証の有無が価格差としてはっきり返ってこない場面が多くあります。直販で顧客と直接つながっている生産者ほど、「うちを知ってくれている人には、認証は要らない」という実感を持っています。取っても値段が変わらないなら、書類と費用を負う理由がない。これは怠慢ではなく、合理的な判断です。
認証を取らないのは、こだわりが足りないからではありません。
国内市場では、報われない投資だったからです。
この判断が輸出の場面で急に苦しくなるのは、「海外は認証が必須」と一括りに聞かされるからです。実際には、買い手は大きく二種類に分かれます。そして、その二種類は求めるものがまったく違います。
有機の表示で棚や売り場を作っている小売や流通です。彼らは商品単体を見ているのではなく、「有機」という約束で組み立てた売り場全体を守っています。そこに認証のない商品を一点でも入れると、売り場の前提が崩れます。だから、味や栽培の実態がどれほど良くても、認証がなければ検討の対象になりません。ここは交渉の余地ではなく、構造の問題です。
生産者と直接つながることを売りにしている輸入業者や専門店です。「誰が、どこで、どう作ったか」を自分で確かめ、その物語ごと顧客に売ります。彼らが見るのは資格ではなく、検証できる事実です。栽培の記録があり、検査結果があり、畑を見せられるなら、認証がなくても話は進みます。むしろ「認証はないが実態はこうだ」と正直に説明できる相手を好みます。
つまり「認証がないから輸出できない」は誤りです。正確には、認証がないと、前者の買い手には当たれません。後者には当たれます。問題は、どちらに時間を使うかを決めていないまま両方に同じ資料を送ってしまうことです。
ここを先に決めておかないと、二つの失敗が起きます。
ひとつは、認証を必須とする買い手に何度も提案を送り続けて、丁寧に断られ続けることです。相手の担当者に悪意はありません。制度上、検討できないだけです。それを「日本の茶は評価されない」と読み替えてしまうと、次の一歩が出なくなります。
もうひとつは逆で、実態で判断してくれる買い手に対して、認証がないことを隠したまま話を進めてしまうことです。後から聞かれて言葉に詰まると、失うのは認証の有無ではなく、説明の誠実さに対する信用です。この種の買い手にとって、そこは商品そのものよりも重い。
先に決めておけば、どちらも避けられます。後者を狙うと決めたなら、認証取得に時間と費用をかけずに、いま用意できるものだけで動き始められます。前者を狙うと決めたなら、認証取得が投資として意味を持つので、そのための書類づくりに腰を据えられます。どちらも正しい道で、間違っているのは決めないことだけです。
実態で判断する買い手は、資格の代わりに証拠を求めます。その証拠は、思われているほど大がかりなものではありません。
この四点に共通しているのは、どれもすでにやっていることを、相手が読める形に変えるだけの作業だということです。新しく取得するものはひとつもありません。そして、この四点が揃っていない状態で問い合わせに答えようとすると、返信までに二週間かかります。海外の相手には、その二週間が「あまり乗り気ではない」という意味で届きます。
これは茶に限った話ではありません。加工食品、調味料、乾物、果実。認証を持たない小規模な生産者が輸出の入り口で止まる構造は、ほとんど同じです。止めているのは認証の不在ではなく、当たる相手を決めていないことと、手元の事実が英語になっていないことです。
認証のない状態で輸出を検討している生産者の方へ
いまの栽培方法、生産量、すでに来ている問い合わせをお伺いできれば、どちらの買い手を狙うべきかと、先に用意する資料を整理してお返しします。