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海外のインポーターが
日本酒に本当に求めているもの

味で落ちているのではありません。
見られている場所が、思っているところと違うだけです。

株式会社コホマダ 代表取締役 髙松直弥
鳥取県海外よろずビジネスサポート駐在員

輸出の相談を受けるとき、蔵元の方が最初に話されるのは、たいてい味のことです。「うちの酒は、飲んでもらえば分かる」。実際、その通りだと思う酒に何度も出会いました。

それでも話が進まないことがあります。理由は、味が評価されていないからではありません。味は入り口の条件であって、決め手ではないからです。

インポーターは、何を仕入れているのか

海外のインポーターは、酒を仕入れているようでいて、実際には「自分の取引先に安心して薦められる状態」を仕入れています。相手はレストラン、酒販店、ホテル。彼らが求めるのは、今月の一本ではなく、来月も再来月も同じ棚に置ける商品です。

この視点に立つと、判断基準の順番が見えてきます。

1

味は前提、決め手にはならない

インポーターの手元には、すでに良い酒がいくつもあります。彼らの言葉を借りれば、「美味しいだけの酒は、もう足りている」。味は選考に残るための条件であって、選ばれる理由にはなりません。ここを理解していないと、試飲で好感触だったのに連絡が途絶える、という経験を繰り返すことになります。

2

ブランドの物語は、売り場で使える形かどうか

物語は確かに効きます。ただし効くのは、現地のスタッフが客に三十秒で話せる長さに整理されているときだけです。何代続いた、どの米を使う、という情報は、それ自体では売り場に届きません。「この酒はこういう場面で飲むと良い」という一文まで落とし込まれていて、初めて武器になります。

3

価格性能が、棚の位置を決める

高ければ売れない、安ければ売れる、という話ではありません。インポーターは、現地の価格帯のどこに置けるかを考えています。同じ価格帯の他国のワインやスピリッツと並べたときに、説明がつくかどうか。その説明が立てば、決して安くない価格でも通ります。

4

そして、安定供給

最後に、そして実質的には最初に、ここが見られます。来年も同じものが同じ量だけ出るか。これに答えられない蔵は、どれほど酒が良くても、継続的な取引の候補から外れていきます。

味で選ばれるのではありません。
二度目に応えられるかで選ばれます。

書類は、思っているほど障害ではない

輸出に踏み切れない理由として、手続きの複雑さを挙げる蔵は多いのですが、実務を見ていると、ここが決定的な障害になることは多くありません。

輸出先国ごとの表示要件、現地での登録、通関に必要な書類。これらの多くは、インポーター側が自国の制度に沿って処理します。彼らは毎日それをやっている専門家であり、扱いたい商品のためなら手を動かします。バックラベルの作成も、たいていは現地側で行われます。

ただし、蔵が何もしなくていいという意味ではありません。書く内容の出どころは、必ず蔵にあります。原材料、アレルゲンに関わる情報、アルコール度数、製造所の情報。これを英語で一度整理しておかないと、取引のたびに同じ質問に答えることになり、その往復で数週間が溶けます。

つまり、ここは「難しいから諦める場所」ではなく、「一度作っておけば以後ずっと軽くなる場所」です。制度を怖がって止まっている蔵ほど、実際には一日で片付く作業の前で立ち止まっています。

いちばん嫌われるのは、二度目に応えられない蔵

現場で最も強い拒否反応が出るのは、味でも価格でもありません。初回の取引は成立したのに、二度目の注文に応えられなかった蔵です。

起きていることは、たいてい悪意のない事情です。国内の取引先を優先した。その年の仕込みが少なかった。人気が出て在庫が尽きた。どれも蔵の側から見れば当然の判断です。

しかし、インポーターの側では別のことが起きています。取引先のレストランにメニューを刷り直させ、酒販店の棚を空け、スタッフに説明の訓練をさせた。そのうえで「今年は出せません」と言われると、失うのは酒ではなく、自分の信用です。この経験を一度すると、そのインポーターは同じ規模の蔵すべてに慎重になります。

蔵が考えていること

まず一度出してみて、反応が良ければ来年から増やせばいい。今年は量が読めないので、確約は避けておきたい。

インポーターが考えていること

初回は誰でも出せる。問題は二度目。少なくてもいいから、毎年確実に出る量を先に知りたい。それが分からない蔵は、棚の一段を任せられない。

先に答えられる蔵が、選ばれる

だから、強い蔵は「いくらでも出せます」とは言いません。「年間で最大これだけ、最低でもこれだけ出せます」と、数字で先に答えます。

この答えは、量の大小で評価されているのではありません。自分の生産能力と取引先への配分を把握している、という事実が評価されています。年間四十ケースでも、それが確実に毎年出るなら、扱う側は計画を立てられます。逆に「たくさん出せます」という答えは、把握していないことの表明として受け取られます。

輸出を考える蔵が、最初に用意する四点

問い合わせが来てから準備を始めると、返信までに二週間かかります。海外の相手にとって、その二週間は「あまり乗り気ではない」という意味に読まれます。だから、来る前に作っておきます。

この四点は、どれも一週間あれば揃います。そして、揃っているかどうかで、最初の返信が当日に出せるか二週間後になるかが決まります。検討の土俵に残るかどうかは、その差で決まっています。

これは日本酒に限りません。食品や飲料を輸出しようとする中小のメーカーが直面する構造は、ほとんど同じです。味や品質に自信がある会社ほど、そこで止まっている理由を味に求めてしまい、供給と資料の側を見落とします。

輸出を検討している蔵・食品メーカーの方へ

いまの生産量、出せる銘柄、すでに来ている問い合わせをお伺いできれば、どこから手をつけるべきかを整理してお返しします。

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