業務とDX
DXの最初の一手は、
作業が一つ「減る」ものにする
現場が抵抗しているのではありません。
最初の一手の選び方が、たいてい逆になっているだけです。
業務とDX
現場が抵抗しているのではありません。
最初の一手の選び方が、たいてい逆になっているだけです。
使われていない画面が、どの会社にもあります。導入のときは全員が集まって説明を受け、半年後には誰も開いていない。ツールの出来が悪かったわけではなく、選定を間違えたわけでもない。多くの場合、最初の一手が「入力が増えるもの」だったせいです。
新しい仕組みを入れるとき、前のやり方をすぐ捨てることはできません。移行中に何かが抜けたら業務が止まるので、当然の判断です。だから最初の数週間は、紙と画面の両方が動きます。
問題は、その「移行中」がいつ終わるのかを誰も決めていないことです。紙をやめる条件、やめる日、やめる判断をする人が決まっていない。すると現場では、紙に書いて、そのあと画面にも入れるという作業が定着します。仕事は増えています。
ここで現場が何を言うかというと、「使いにくい」です。これは操作性の話ではなく、「前より手数が増えた」の言い換えです。そして正しい指摘です。増えているのだから。
数ヶ月経つと、紙のほうが残ります。紙は業務に必要で、画面は報告に必要なだけだからです。必要なほうが生き残ります。
日報のシステム化、稼働の記録、実績の入力。現場から見ると、やることが一つ増えます。本部には数字が集まりますが、入れた本人には何も返ってこない。だから続きません。
転記をやめる、集計をやめる、探す時間をなくす、二度打ちをなくす。入れた本人の手数がその日から減ります。だから言われなくても使われます。
現場が最初に評価するのは、
正確さでも網羅性でもなく、自分の手数です。
効果の大きい順に並べたくなりますが、それは二番目の基準です。最初の基準は「その一手で、誰の作業が今日から一つ消えるか」です。
具体的には、こう探します。同じ情報を二回書いている場所。誰かが毎朝それを別の形に書き写している場所。「あれどこだっけ」と人に聞いている場所。締めの日に電卓を叩いている場所。ここには必ず、消せる作業があります。
そして重要なのは、消した作業を、消したままにすることです。前の方法をいつやめるか、誰の判断でやめるかを、始める前に決めておく。ここを決めていない案件は、ほぼ全部が二重作業に落ちます。
本部は数字が欲しい。これは正当な要求で、最終的には必要です。ただ、一手目に置くと現場の負担だけが増えます。
順番を入れ替えます。まず現場の作業を減らす。減らした仕組みの中を通る情報を、そのまま集計に回す。現場が自分のために入れたデータが、結果として本部の数字になっている——この形にすると、誰も余分な入力をしません。
逆に言えば、一手目の設計時点で「この情報は後で集計に使う」と決めておく必要があります。現場のために作った仕組みが、集計に使えない形で完成すると、結局もう一つ入力が生えます。
小さく始めるとよく言われますが、範囲を小さくするという意味ではありません。引き返せる大きさで始める、という意味です。
どのツールを使うかは、決めることの中でいちばん後ろに来ます。業務が分解できていれば、必要な機能は数行で書けるようになり、そこまで来れば選定は難しくありません。既製品で足りることも多いです。
逆の順序——ツールを先に決めて、それに業務を合わせる——でも動く場合はあります。会社の規模が小さく、業務がまだ固まっていないときです。ただ、特定の人の頭の中に判断が溜まっている業務では、ほぼ失敗します。ツールの中に、その判断を入れる場所がないからです。
入れたのに使われていない、という状態からでも構いません
どの業務で、誰の手数が増えているのかをお伺いできれば、一手目の置き換え候補と、前のやり方をやめる条件を整理してお返しします。