AI導入

AIは、どの業務
から入れるべきか

全社の計画から始めると、たいてい止まります。
半日で1本だけ動かすほうが、結果的に早く進みます。

株式会社コホマダ 代表取締役 髙松直弥
鳥取県海外よろずビジネスサポート駐在員

AIを入れたい、という相談で最初に出てくる言葉は、だいたい同じです。

「何から手をつければいいか分からない」

そして多くの会社が、ここで正しいことをしようとします。全社の業務を洗い出し、優先順位をつけ、導入計画を作る。この進め方は、ほぼ必ず途中で止まります。間違っているからではありません。終わるまでに、誰も何も体験しないからです。

計画から始めると止まる理由

洗い出しには時間がかかります。三ヶ月かけて計画ができたとして、その時点で社内にあるのは資料だけです。資料は、読む人によって解釈が変わります。経営者は投資額を見て、現場は手間が増える話だと受け取り、情報システムは責任の所在を気にします。誰も実物を見ていないので、議論が意見の交換にしかなりません。

一方、動いているものが1本あると、会話が変わります。「これと同じことを、うちの部署でもできないか」という話になる。判断材料が、想像から実物に変わるからです。

最初の1本に選ぶべき業務の条件

どの業務でもいいわけではありません。最初の1本には、選び方があります。

1

毎週、必ず発生する

月に一度の業務を自動化しても、効果を感じるまでに一ヶ月かかります。毎週あるものを選ぶと、その週のうちに「楽になった」が起きます。

2

やっている人が、一人か二人

関係者が多い業務は、手順を決めるだけで会議が必要になります。最初は、担当者に直接聞けば全部わかる範囲に限ります。

3

間違えても、取り返しがつく

請求や入金など、間違いが外に出る業務は最初に選びません。社内で完結し、出てきたものを人が確認してから使うもの。下書き作成、要約、分類、転記あたりが適しています。

4

「面倒だ」と口に出している人がいる

これが最も大事な条件です。効率の数字より、実際に嫌がられている業務を選ぶ。使う理由が、最初から本人の中にあるからです。

逆に、最初に選んではいけないのは「一番コストがかかっている業務」です。金額は大きいのですが、たいてい関係者が多く、例外処理が多く、失敗したときの影響も大きい。最初の1本は、効果ではなく、終わることで選びます。

半日で、実際に何をするか

私たちがこれを半日でやるときの中身は、こうなっています。

午前の前半は、業務を3つ挙げてもらい、1本に絞ります。ここで時間をかけません。上の4条件に当てはめると、たいてい自動的に決まります。

午前の後半から午後にかけて、その業務を、その会社の環境の中で動く形にします。新しいシステムを導入するのではなく、すでに使っている道具の中に置きます。普段の仕事の場所から離れた場所に置くと、翌週には使われなくなるからです。

最後に、手順書を作ります。作った本人がいなくても回る形にしておくことが、その後の分かれ目になります。

「動いたが、使われない」をどう防ぐか

正直に書くと、この進め方が失敗するとしたら、ここです。その日は動いた。全員が感心した。しかし三週間後には誰も使っていない。

原因はほぼ一つで、担当者が、自分で直せないからです。少し条件が変わったとき、直し方が分からないと、人は元のやり方に戻ります。だから当日は、完璧なものを作るより、担当者が手を入れられる簡単なものにしておくほうがいい。半日で作れる範囲に収める理由は、そこにもあります。

その1本が終わってから、計画を書く

順番が逆に見えるかもしれませんが、実務的にはこちらが早いと考えています。1本動かした後に書く計画は、想像ではなく経験から書けます。どの工程に時間がかかったか、誰が抵抗したか、何が足りなかったか。それが分かっている状態で書く計画は、分量が減り、精度が上がります。

全社のAI化は、その積み重ねの結果として起きます。最初から目指す対象ではありません。

AIをどこから入れるか迷っている方へ

いま一番めんどうな業務を3つ伺えれば、最初に手をつけるべき1本を整理してお返しします。

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