日本市場参入
返事が来ないのは、
断られたのではない
日本企業からの沈黙は、拒否ではありません。
多くの場合、社内で説明できない状態のことです。
日本市場参入
日本企業からの沈黙は、拒否ではありません。
多くの場合、社内で説明できない状態のことです。
海外企業から日本市場について相談を受けるとき、いちばん多い言葉はこれです。
「打ち合わせの反応はとても良かった。その後、連絡が来ない。」
そして次に出てくるのが、「日本企業は断るときに断らない」という感想です。これは半分正しく、半分間違っています。断っていないのは事実ですが、それは礼儀の問題というより、断る決定すら下りていないことのほうが多いからです。
返信が来ない状態を一括りにすると、何もできません。実際には、少なくとも五つに分かれます。
担当者は理解している。しかし上に上げるための説明が組み立てられない。とくに前例のない外国製品では、「なぜ今、なぜこの会社か」を社内の言葉に翻訳する作業が丸ごと担当者に乗ります。それが終わるまで、返事は書けません。
再開できます。説明資料を相手の社内向けに作って渡すと、動くことがあります。
稟議に乗った状態です。承認者が5人いれば、1人あたり3営業日でも3週間かかる。担当者からすれば「進んでいる」ので、進捗報告をする理由がありません。沈黙は前進の証拠でもあり得ます。
再開できます。ただし急かすと止まります。待つのが正解です。
日本の会計年度は4月に始まります。予算費目は年度の開始前に立てておく必要があるため、たとえば10月に届いた提案は却下されたのではなく、単に18か月早い。担当者は「今は無理」と言えず、時期が来るまで黙ります。
再開できます。次の予算編成期に戻ってくればいい。多くの企業は、その3か月前に諦めます。
日本企業では3〜5年での異動が一般的です。後任は前任の案件を引き継ぎますが、外部からの提案は優先度が下がります。誰も断っていないのに、案件だけが宙に浮きます。
再開できます。ただし窓口を一人に依存していた場合に限り、難しくなります。
これもあります。ただし私の経験では、体感より少ない。そして本当に興味がない場合、日本企業は丁寧すぎる短い返信を返してくることが多い。無視ではなく、当たり障りのない一文が来ます。
再開できません。ここに時間を使わないことが重要です。
この言葉は、海外の担当者を最も混乱させます。英語に訳せば "We will consider it" ですが、実際の意味はほぼ次のどれかです。
「自分は良いと思うが、社内で通す自信がない」
「今は予算がない。いつなら取れるかも言えない」
どちらも拒否ではありません。しかしどちらも、そのまま待っていても状況は変わりません。相手が困っているのは提案の中身ではなく、社内を通す手段だからです。
返信が途絶えたときに送る内容として、私が最も効果があると考えているのはこれです。
「社内でご説明いただくときに、
いちばん答えにくい質問はどれでしょうか。」
この聞き方には三つの利点があります。相手を責めていない。相手が悪者にならずに現状を説明できる。そして返ってきた答えが、そのまま次に作るべき資料になる。
「ご検討状況はいかがでしょうか」と聞くと、相手は「検討中です」としか答えられません。質問の形が、返ってくる情報の質を決めます。
東京で株式会社コホマダを経営し、あわせて日本の県の海外ビジネス支援駐在員という公職を務めています。海外企業の日本参入と、日本企業の海外展開の両方を扱っているため、沈黙している側の事情も、沈黙されている側の焦りも、両方見ています。
実務としては、ブラジルの物流企業へ業務効率化ツールを開発・納品し、日本の大手小売企業のDXに関わり、スウェーデンのエネルギー事業とアフリカの政府案件の展開支援を手掛けてきました。顧客の社名は出していません。それは意図的なものです。