海外商談
価格はいつ出すべきか
「まずは条件を詰めてから」という判断が、
海外では離脱の理由になることがあります。
海外商談
「まずは条件を詰めてから」という判断が、
海外では離脱の理由になることがあります。
海外の担当者から、初回のやり取りで価格を聞かれる。日本の感覚では早すぎる質問に思えます。仕様も数量も決まっていないのだから、答えようがない。
そこで「詳細をお伺いしてからお見積りします」と返す。ここで多くの商談が静かに終わります。
この段階の質問は、購入の意思表示ではありません。選別です。
担当者は複数の候補を並べ、社内で検討に上げる数社を絞ろうとしています。そのとき必要なのは正確な見積ではなく、桁が合うかどうかだけです。
「正確な数字を出すのが誠実」
「答えられない=扱いが重い会社」
丁寧に断っているつもりが、
候補から外れる合図になります。
単価いくら、ではなく「この数量ならこの範囲」で返す。条件が付いて構いません。「FOB、1,000個、標準仕様で1個あたり○〜○」。
これで相手は社内に持ち帰れます。桁違いなら、その場で終わる。それも成果です。半年かけて価格で折り合わないより、はるかに良い。
数量、仕様、包装、輸送条件、支払条件。価格が動く要因を示すと、相手は「交渉の余地がある」と理解します。逆に一つの数字だけ出すと、それが上限として扱われます。
ここで初めて詳細な見積を出す。有効期限を必ず入れること。為替と原材料が動く前提で書いておかないと、半年後に同じ価格を求められます。
誤解されやすい点です。早く出すことと、安く出すことは無関係です。
むしろ最初に低い数字を出すと、その後は下げる方向にしか動けません。日本企業は「まず安く入って実績を作る」を選びがちですが、海外の取引では一度決まった価格は据え置かれる前提で見られます。値上げ交渉は、値下げ交渉よりはるかに難しい。
価格を下げる代わりに、条件で調整するほうが安全です。数量を増やしてもらう、支払を前倒ししてもらう、輸送条件を変える。同じ利益を守りながら、相手の得を作れます。
金額だけを書いた見積は、事故のもとです。最低限、この四点を添えてください。
通貨(円建てか外貨建てか。円建てなら為替リスクは相手が負います)。貿易条件(FOB / CIF / DDP。どこまでの費用が含まれるか)。有効期限。支払条件(前払、L/C、掛けなら何日か)。
これが揃っていない見積は、相手の社内で比較表に載せられません。載らなければ、検討されません。
東京で株式会社コホマダを経営し、日本の県の海外ビジネス支援駐在員という公職を務めています。海外企業の日本参入と、日本企業の海外展開の両方に関わっているため、見積の出し方ひとつで商談が続くか終わるかを、双方の側から見ています。