海外展開
代理店に任せたのに
売れない
相手が怠けているとは限りません。
多くの場合、動かない理由は契約書の中に書いてあります。
海外展開
相手が怠けているとは限りません。
多くの場合、動かない理由は契約書の中に書いてあります。
海外展開の相談で、いちばん多い形がこれです。
現地の代理店と契約した。最初の数か月は連絡があった。サンプルも送った。そして一年経っても、注文が来ない。
こちらから催促すると、返事はいつも同じです。「今、良い顧客に紹介しているところです」。
相手の立場で考えると、話が見えてきます。
代理店は複数のメーカーの商品を扱っています。彼らの時間は有限で、どの商品に営業をかけるかは「売りやすさ」と「利幅」で決まります。知名度がなく、現地語の資料がなく、問い合わせへの返答が数日かかる日本製品は、その順位で下にきます。
売る義務がないなら、
売らないのが合理的です。
そして多くの契約書には、その義務が書かれていません。
「その国で御社だけが扱えます」は、相手にとって強い魅力です。だから交渉の早い段階で必ず求められます。
しかし独占権を渡した瞬間、その国の売上はその一社の努力量で上限が決まります。そして相手には、他社を排除したまま何もしないという選択肢が生まれる。棚を押さえておくだけで、競合の参入を防げるからです。
渡すなら、期間を区切るか、数量条件とセットにする。この二つのどちらも無い独占権は、実質的に「市場を凍結する権利」を無償で渡すことになります。
年間の最低購入数量(ミニマム)を決め、未達の場合は独占権が自動的に非独占に切り替わると書く。解除ではなく切り替えにするのが実務的です。
解除は揉めます。相手も「それなら契約しない」となる。しかし「達成できなければ他社も入れる」であれば、相手は反論しづらい。売る気がある代理店ほど、この条件を受け入れます。
数量は、相手に出させてください。こちらが提示すると根拠のない数字になります。相手が自分で言った数字は、守る動機が働きます。
初回は一年、更新は双方の合意。これで十分です。三年や五年で結ぶと、間違った相手を選んだときに動けなくなります。
相手が長期を求めてきたら、それは投資回収の懸念です。その場合は期間ではなく、こちらの支援(販促費の分担、初回在庫の条件)で応えるほうが健全です。
条件以前に、そもそも相手の実力を測る方法があります。
既に扱っている他社商品を、実際に見に行くこと。店頭にあるか、どの棚のどの位置か、価格はいくらか。オンラインなら、そのページの作り込みと在庫状況。
ここで分かるのは「売る能力があるか」ではなく、「新しい商品にどれだけ手間をかける会社か」です。既存商品を雑に扱っている代理店は、あなたの商品も雑に扱います。
この確認は、契約前なら当然の質問として通ります。契約後に聞くと、不信の表明になります。順番が重要です。
代理店が動かない原因が、こちら側にあることも同じくらい多いです。
資料が日本語のみ。問い合わせの返答に数日。仕様の質問に即答できない。
商談の途中で止まる。顧客の前で恥をかくので、売りたくなくなる。
代理店が本当に必要としているのは値引きではなく、商談で使える材料と、その場で答えが返ってくることです。ここが揃っている商品は、放っておいても優先順位が上がります。
東京で株式会社コホマダを経営し、日本の県の海外ビジネス支援駐在員という公職を務めています。日本企業の海外展開と、海外企業の日本参入の両方に関わっているため、代理店契約が機能する場合としない場合を、双方の側から見ています。