海外 → 日本
日本の施設が「売上分配」を
嫌う本当の理由
金額でもめているのではありません。
払い方の前提が違うまま、話が進まないだけです。
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金額でもめているのではありません。
払い方の前提が違うまま、話が進まないだけです。
海外のコンテンツ提供者と、日本の体験型施設やアミューズメント運営者の商談に立ち会うと、ほぼ決まった場所で空気が変わります。条件の話に入った瞬間です。
海外側は、たいてい売上分配(レベニューシェア)を前提に話を始めます。初期費用を抑えて導入してもらい、売れた分だけ分け合う。相手のリスクを下げる提案のつもりです。ところが日本の担当者は、そこで少し困った顔をして「買い切りではできませんか」と返します。
海外側はこれを「うちの作品を安く買い叩きたいのだろう」と読みます。ほとんどの場合、それは誤読です。日本の施設が買い切りを求める理由は、値段とは別のところにあります。
売上分配は、何人が体験したか、いくら売れたかを毎月集計し、先方の様式にまとめ、確認を受けて送金する、という作業を伴います。この作業は一円も生まない上に、毎月必ず発生します。担当者は現場の運営と兼任していることが多く、月末にこの手間が増えることを本能的に避けます。しかも海外送金なら、経理部門にも毎月の仕事が増えます。金額が同じなら、増える作業が少ないほうが選ばれます。
日本の決裁は、金額の大小よりも「何回、誰の判断が要るか」で難易度が変わります。買い切りは一度の稟議で終わります。継続課金は、毎年の予算に枠を確保し続ける必要があり、そのたびに前年の成果を説明する義務が生まれます。担当者は、自分が異動したあとも同僚がその説明を背負うことまで見ています。一度で終わる支出は、社内的にずっと軽いのです。
売上分配は、構造上、来場者数や客単価を相手に開示することを意味します。施設にとってこれは経営の中身そのものです。相手が海外の会社であれば、その数字がどこまで共有されるかを完全には管理できません。閑散期の数字を見られること自体を嫌う担当者もいます。契約書で守秘を定めても、この不安は消えません。
ここが最も見落とされます。三年で見れば支払総額がほぼ同じ設計であっても、「月々の分配」を「三年分の買い切り」に組み替えるだけで、社内を通る案件があります。施設が節約したいのは金額ではなく、毎月の手間と毎年の説明責任です。海外側が失うものは、実はほとんどありません。
値引きを求められているのではありません。
払い方を変えてほしい、と言われています。
海外側が売上分配を好むのにも、当然の理由があります。作品が当たったときの上限がなく、施設の導入障壁も下げられる。理屈としては正しい。
ただし日本では、この「上限がない」という利点が働きにくい場面があります。体験型施設の売上は、作品の面白さだけでなく、立地・集客施策・季節・併設テナントに強く左右されます。提供者側がコントロールできない要素で分配額が決まるなら、上振れの期待値はそもそも読みにくい。一方で、報告と精算のコストは確実に発生します。
初期費用を下げれば導入しやすいはずだ。当たれば大きく返ってくる。買い切りを求められるのは、価値を安く見られている証拠ではないか。
毎月の集計と送金を誰がやるのか。来年も予算を取り続けられるか。うちの客数を外に出していいのか。一度払って、あとは運営に集中したい。
売上分配を一切捨てる必要はありません。ただし、主たる条件を買い切りに置き、分配は例外として添えるほうが、日本では話が進みます。
たとえば、基本は期間を区切った買い切りにしたうえで、想定を大きく超えた場合にだけ追加の精算が発生する形にする。この場合でも、報告の頻度を年一回にできるなら、現場の負担はほとんど増えません。嫌われているのは分配そのものではなく、毎月発生する作業です。そこを外せば、条件は残せます。
逆に避けたほうがよいのは、「まず分配で始めて、様子を見て買い切りに切り替えましょう」という提案です。善意のつもりでも、施設側には「二回稟議を上げろ」と言われているように聞こえます。一度目が通っても、二度目で止まる確率は決して低くありません。
買い切りを求められてから社内で検討を始めると、返事までに数週間かかります。その間に、施設の予算検討の時期は過ぎていきます。だから、聞かれる前に決めておきます。
この四点を1枚にまとめて渡せるかどうかで、最初の面談の後の展開が変わります。条件が揃っていれば、担当者はその場で社内に持ち帰る準備ができます。揃っていなければ、検討は「次回以降」に送られ、多くはそこで止まります。
これは日本の施設側にも言えます。買い切りを希望するなら、その理由を「社内の稟議が一度で済むから」「毎月の報告に人を割けないから」と具体的に伝えるほうが早い。理由を言わずに「買い切りで」とだけ返すと、海外側はほぼ確実に値切りだと解釈します。
金額の話ではないと分かった瞬間、相手の態度は変わります。多くの提供者は、手間を減らす形での合意なら、総額を維持したまま応じられるからです。
日本の施設への導入を考えている海外の提供者の方、海外コンテンツの導入を検討している施設の方へ
いまの契約条件と想定規模をお伺いできれば、日本側の社内でどこが引っかかるかを整理してお返しします。